電気自動車がホントにエコなのかなんてどーでもよくて、持続的に使える移動手段なのかが見えてこない


これはアメリカ人特有のジョークなんだと思う

たしか10年くらい前だったか、アメリカで電気自動車が発売されると聞いてテスラのショールームに出かけたことがある。当時は「テスラモーターズ」なんて聞いた事もなく、そもそもトヨタやフォードのようなディーラーがなかった。ショールームといってもショッピングモールの仮店舗にとりあえず車を並べてみた感じの店だった。

今にして思えばあれはモデルSだったと思う。子どもに車の絵を描かせるとそういう形になりそうな特徴のないデザインとベーシック価格で6万ドルというプライスタグが衝撃的だった。そのころで新車のアコードやカムリが2万ドルで買えたので、なんて場違いなところにきたのかとそそくさと退散した。

電気自動車をディスるつもりはない。むしろテスラが世に出てくるずっとまえから、電気自動車には明るい未来を期待している。テスラが出る少し前には三菱のi-MiEV(アイ・ミーブ)や日産リーフなどがあったし、その前には確かフォードからも電気自動車が発売されていた。できればガソリン自動車からは卒業したいと考えていた。

カリフォルニアは排ガス規制がとてもきびしくて、車を長く乗り続けようとすればするほど維持費がかさんでくる。気に入った車は長く大切に乗りたい。これまでスモッグチェックに落ちるたびにエンジンのオーバーホールと載せ換えの見積もりを取ったが、オーバーホールは時間がかかりすぎるし、エンジンを載せかえるなら車を買い替えたほうがよいという結論になってしまう。

あえてガソリン自動車で言えば、エンジン以外のフレーム、車輪とサスペンション、ステアリング、ブレーキ、エアコンやヒーターなどはパーツがあれば半永久的に使える。もちろんエンジンだってオーバーホールすればずっと使えるけれど、もしモーターで走らせ、電池が比較的かんたんに交換できるなら、車ってそんなに買い替える必要はなくなるはずである。

感覚的に言えば、社会人になって初めて買った車を一生持ち続けられるようなものであってほしい。たとえば、その時代を象徴するようなホンダシティやスカイラインGTRをずっと乗り続けられるようなライフスタイルである。

以前、製造ラインで大型工作機械を扱ったことがある。それは二十年以上も毎日24時間稼動していたが、モーターはオリジナルであることを知って驚いた。もちろんモーターのベアリングは磨耗するので交換は必要だったが、五年とか八年くらいの間隔だった。もしかしたら昔から街中を走っている路面電車など、製造時のモーターを整備しながらずっと使い続けているのではないだろうか。

電気モーターはエンジンと比べると構造がシンプルである。出力特性は低回転から最大トルクを得ることができるのでトランスミッションはなくてもかまわない。また摩擦面がほとんどなく、オイル交換も要らない。もちろんスモッグチェックを受ける必要もない。電気モーターが車の原動力として優れていることはあきらかだ。しかし問題はバッテリーの重量と価格と耐用年数である。バッテリーは重たくて、値段が高く、そして使用状況や充電環境によって耐用年数に差がでてくる。

電気自動車は車両価格の40パーセント以上の費用を電池が占めている。これから先、リチウムイオンバッテリーはもっと軽くなって、値段も下がり、寿命も延びるだろう。あるいは革新的なバッテリーが開発されて、電気自動車はもっと普及が進むのだろう。

10年前にテスラショールームに出かけたとき、無意識にコンパクトで安くて長く乗り続けられる車が世の中に出てくるのだと期待していた。あれからもう10年も経過したが、まだ電気自動車は高くて、長く乗り続けられるかも分からない。

たとえば、テスラ車の電池パックが損傷した際の交換費用は270万円前後する。たぶん他のメーカーもそのような感じなんだろう。もし電池が使えなくなったとき、ユーザーが270万円をかけてまで乗り続けるとはどうしても思えない。つまりガソリン自動車の寿命はエンジンが尽きるときだが、電気自動車はモーターも車体もまだまだ使えるのに、バッテリーの寿命が車の寿命なんだろう。

さて、最近は電気自動車ユーザーが色々な情報を発信してくれている。しかしまだ日常的に使える移動手段とは言えない。アメリカでも新型の日産リーフは補助金とあわせれば2万2千ドルで手に入るが、それで週末のドライブや遠出のラスベガスやサンフランシスコに行こうとは思わない。電気自動車ユーザーの誰もが「結局はドライブ先で休憩するでしょ、そのときに充電ステーションで休むだけのこと」と言うが、充電のタイミングにあわせての休憩なんて拘束でしかない。休みたいときに休んで、食べたいレストランを選び、感動する景色をもとめてハンドルを切りたいのだ。

テスラ社のサービスカー

それでも、これから先も電気自動車に対する関心を持ち続けようと思う。注目したいのは現行のユーザーがどれほど長く乗り続けるのか、そしてまた電気自動車を買うのかということ。さらに電気タクシーが街中を走り始めたときが乗り換えるタイミングだと考えている。

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