日本食レストラン恐怖症

私の住んでいる街はとっても小さな街なのだけど、ちょっと数えただけでも日本食レストランが10軒くらいある。この場所に引っ越してきたときは、数軒しかなかったので、それに較べればずいぶんと恵まれた環境になったものだと思う。たぶんまだ増えるだろう。

アメリカは日本食ブームの再来らしい。今度のブームはかなり大きくて、継続性のある大きな波になっている。これは日本人としては素直に嬉しい。戦後日本がオリンピックの開催地に立候補した際、生魚を食べるような野蛮な国ではオリンピックなどできないと、欧米諸国がのたまわれたそうだが・・・

今ではスーツを着たビジネスマンがパワーランチで懐石セットを食べ、OLらしき女性がラーメン店に列をなしている。回転寿司では、家族連れが楽しそうに積み上げた皿の高さを競いあうなど、誰が想像できただろうか。

だがここに来て「これって日本食じゃないよね」と思われる店も増えてきて、どう選べばいいのか困ってしまう事がある。そういう店に遭遇したときに日本人経営ではない傾向があるように思える。 あらかじめ言っておくけど、日本にも日本人料理人のイタリアンや中華料理があるし、フレンチだってある。だからどこの国の人が何を作ってもかまわないと思う。以下はそういった事を含めて、私が行った事のある範囲での感想をまとめてみた。

 [アメリカ人経営と思われるの日本食レストラン]

ほぼチェーン店化している。よく日本食を勉強していると思う。チキンテリヤキがなぜか主流になっていて、というかなぜ照り焼きなのかといつも思う。日本に住んでいたころは、それほど鶏の照り焼きなんて食べなかった。まーとにかく普通においしくて安い。メニューの種類は少ない。

 [韓国人経営と思われる日本食レストラン]

日本人が経営している店より多いような気がする。繁盛している店は日本人の板前さんがいるようだ。一方で見てくれだけで日本食に出している店もある。それから味や店の雰囲気は良くても、なぜかスタッフの対応でイヤな思いをする事が多い。サラダと刺身を器の中で混ぜて食え(命令形)と言われたときには、首を32度に傾けたまま動けなくなってしまった。(そー言う日本食ってあっただろうか、と三日くらい悩んだ)

[中国人経営と思われる日本食レストラン]

実を言うとこれが一番嬉しい。安い、うまい、選り取りみどりである。日本食レストランだと思ったのに中華も食べれるなんて、日本から来てハンバーガーに飽きてきた旅行者にも嬉しいと思う。中国人は、料理にプライドを持っているからどれも美味しい。ただし衛生的ではないと思う店がある。

 [国籍不明な日本食レストラン]

創作料理だと言われればそうかもしれないが、気分的に和食モードになっているとショックが大きい。お値段が高めである。看板に漢字が使われ、店の中には提灯、BGMには琴と三味線の曲が流れ、店員がなぜか浴衣を着てたりする。まるで昭和時代の基地の街のような妖しい雰囲気。しかしスタッフに東洋人らしき姿はない。こういう店に入ってしまった時は、生魚をやめてトンカツ(のような)定食でも頼めばそれなりに楽しめる。

 [日本からやって来たラーメン店]

現在カリフォルニア州もしくは全米でものすごい勢いで増えている。競争レベルも高い。しかしこれが一番厄介である。日本の食材で、日本人経営、スタッフも日本人なのに、スープも麺もスーパーで手に入る生ラーメン以下というのがある。そんな店が地元の学生や家族連れで繁盛しているという摩訶不思議な現象が起きていて、さらに混乱させられる。他にトンコツに限って言えば、あたり外れが多く、福岡出身の妻が満足できるラーメン店にはまだ出会っていない。
 

ロスアンゼルス リトル東京の一角

日本食レストランが増えて、ピザやフライドチキン以外の店を気軽に選べるようになったのはよい事なんだけど、どうやって美味しい日本食レストランを見つけるのか、と言うことではけっこう難しい環境になってしまっている。
 
ちなみに地図アプリを使って、[JAPANESE RESTRANT]などと検索すると大抵外れる。評価のコメントなんてゼーンゼン役に立たない。というわけで普段の生活圏を離れて、日本食レストランを探すという事は、見知らぬ酒場をさまよっているようで、なかなか怖いものがある。