猫は呼んでも来ないが役に立つ
昨夜は雨が降った。
夜更けに「銀河鉄道の夜」の朗読を聴いていたら、窓の外から水の落ちる音がして、ドアをあけたら思いっきり雨の匂いが流れ込んできた。
「さぶっ」
布団にもぐりこみまた銀河鉄道を聴きはじめる。結局ジョバンニとカムパネルラがサザンクロスの停車場へたどりつく前に眠ってしまった。
雨は夜明け前にはあがっていて、雲はどんよりしたままで空気が重い。朝ごはんをすませたネコ達もいつより沈みがちに見える。こうして窓辺で寝っているようでもあり、ぼんやりしているようでもある。
レンズ越しに顔をのぞきこみながら、あの銀河鉄道は天国への階段のようなものだろうかとふと思いかえす。猫は幽霊が見えるらしいから答えを知っているかもしれない。昨日はとなりで聴いていたはず。でも答えてくれるわけでもない。
猫は何もしてくれない。呼んでも来ない。悪いことをしているのにしかっても無視される。
それでも、こんな風に飼い主をスローな時間に引きずり込んでしまう能力は優れている。一家に一匹いかがだろうか。